【外国の子どもの習慣】ベトナムでのお月見(中秋節)は子どもが主役?
日本でお月見をする「十五夜」は、「中秋の名月」とも呼ばれ、旧暦8月15日(2022年では9月10日)の夜またはその夜の月のことを指します。お月見は、もともと中国の「中秋節」が日本へと伝わったもので、日本以外にも広くアジアの国々へと伝わっているといいます。
日本のお月見は、静かに月を愛でる印象がありますが、他の国では様子が異なります。
そこで今回は、お月見の起源である中秋節について紹介し、特に賑やかな子どもが主役のイベントとなっているベトナムの中秋節に焦点をあて、子ども達がどのように過ごすのかについて紹介いたします。
中秋節と他国の習慣
古来、中国では旧暦8月15日の中秋節を、「春節(旧暦の正月)」、「元宵節(旧暦1月15日)」、「端午節(旧暦5月5日)」と並ぶ代表的な祭日と定め、遠く離れた家族が集まって食事をし、月餅を食べながら、家族でお祝いをする日として、大切にしてきました。
中秋節は日本のほか、台湾や香港、韓国やシンガポールなどさまざまな国に伝わりましたが、香港での三晩連続で行われる巨大な火龍を動かすパフォーマンスイベントや、シンガポールでのトロピカルフルーツを使った月餅など、国によって特色がみられるものの、家族が集まってお祝いをする日として現在でも多くの国に親しまれています。
日本のお月見の歴史
日本では中国から中秋節が伝わったのち、平安時代において貴族の間で月を見る宴が開かれるようになりました。当時は直接月を見るのではなく、杯や池に映る月を見て楽しんでいたようです。また、「月(の明かり)に感謝する」、「農作物の収穫を祝う」といった意味合いから、月見団子やススキ、芋類などの農作物をお供えするようになったといいます。現在では、お月見は1年で最も美しい満月を眺める日として、年代問わず親しまれていますね。
ベトナムの中秋節
ベトナムの中秋節は、ベトナム語で「テット・チュン・トゥー」と呼ばれています。稲作農家の収穫時期に当たる中秋節に、満月の下で収穫した作物を一族で囲んで宴会を行う習慣として広がり、子供たちは紙で作った魚や蝶々などのおもちゃで遊び、夜になると灯篭と太鼓を持って村中を歩きまわったと言われています。
もともと家族円満の意味を持つ中秋節ですが、経済が発達するにつれ家族が離れて暮らす家庭が増えたため、次第に中秋節はお正月と並び、家族が集まる貴重な日となりました。
そんななか、故ホー・チ・ミン氏が毎年中秋節に合わせて全国の子どもたちに手紙を送ったことから、中秋節は子どものための日という意味合いが強くなったようです。中秋節が近づくと子供たちは灯篭やお面、おもちゃなどを買ってもらい、街や学校では中秋節にちなんだ遊びやイベントが行われ、お菓子の配布も行われるようになりました。今ではすっかり子どもが主役の日として認識されるようになっています。
ベトナムの子どもたちにとっては、「月を見て楽しむ日」ではなく、「おもちゃを買ってもらえる日」、「お菓子を食べられる日」という印象が強いかもしれません。祝い方に変化があるものの、中秋節は子どもたちにとって楽しい年間行事としてしっかり根付いているようです。
子どものころの楽しい記憶によって、中秋節はこれからも忘れることなく受けつがれ、家族の絆を薄れさせない機会となることでしょう。